表面処理INDUSTRIAL SUPPLIES
《特》”剥がれない”付着抑制
このページでは”剥がれない”付着抑制処理として多くのお客様に選ばれている、マイクロディンプル処理®をご紹介します
目次
◆ マイクロディンプル処理®(MD処理®)
工場の自動化が進む昨今、付着抑制や滑り性向上のニーズは高まっています。
付着抑制ができれば原料の廃棄が減り、洗浄作業の負担も低減できます。
また、滑り性が向上できれば、予期せぬ搬送ラインの滞留を減らし、生産性を維持することが可能です。
付着抑制と滑り性の向上についての対策で最もポピュラーなのはフッ素樹脂コーティングかと思います。
フッ素樹脂は耐薬品性、耐熱性、非付着性に優れた特徴を持っています。
家庭用のフライパンのコーティングとしても一般的ですが、もちろん工業分野でもフッ素樹脂コーティングの追加によって滑り性の付与を行なうことは多くあります。
とても有用なフッ素樹脂コーティングではありますが、難点もあります。
それはコーティングの剥がれやすさです。
フッ素樹脂コーティング被膜はあまり硬度が高くなく、家庭用のフライパンのコーティングでもよくあることですが、油汚れが完全に取れていないままで放置してしまったり、金属性の部品をぶつけて細かい傷ができたりするとコーティング膜が剥がれてきてしまいます。
剥離したコーティング膜は黒っぽい色のため目立ちにくく、異物混入を防ぐためには早めに再コーティングを行なうしかありません。
食品工場の中には異物混入のリスクを避けるため、フッ素樹脂コーティングNGと決めているところもあります。
このような、異物混入対策に厳しい工場にも多く採用いただいているのが、マイクロディンプル処理®です。
㈱サーフテクノロジー(不二WPCより分社)という会社が開発した特許技術で、母材の表面に特殊な凹凸を形成することで摩擦係数を減らし、滑り性と非付着性を向上させます。
異素材の膜で覆うコーティングとは違い、表面も母材そのものであるため、膜が剥がれる心配がありません。
【MD処理®の効果例】
✓ 粉の付着抑制
✓ 撥水性の向上
✓ 塗布した液体潤滑油を長く留める
◆ 一般的なブラスト処理との違い
母材の表面に細かい凹凸を付ける表面処理加工の代表的なものに『ブラスト処理』があります。
ブラスト処理は基材の表面に付いた古い塗料や汚れを剥がしたり、接着やコーティングが強固に付くようにするアンカー効果を目的としているため、粒の大きなメディア(研磨剤)を使用し、表面を削ってざらざらにします。
これに対し、マイクロディンプル処理®は基材の表面に絶妙な凹凸を付けることで摩擦係数を下げることを目的としており、もっとずっと細かいメディア(研磨剤)を使用します。
一般的なブラスト処理のように基材が削れないので、寸法変化も起きません。表面の凸凹が非常に細かいため、さらさらした表面に仕上がります。
複数のメディアを使用し、用途に合った凹凸を作ることが可能です。
当社では食品工場の設備(ステンレスなど)で採用された事例が多くはなりますが、それ以外にも、樹脂やガラス面への加工でも粉体の付着抑制効果が確認され、採用いただいた実績があります。
◆ MD処理®×コーティング
MD処理®はそれだけでも上でご紹介したような効果がありますが、他にもコーティングを長持ちさせる効果も期待できます。
ここではMD処理®と組み合わせて施工することのできるコーティング例を2つご紹介します。
◇ シリコン系 非粘着コーティング ⇒ Infinity530
これまで、べた付きのある高粘度の物質の付着抑制対策として、最もポピュラーな方法はやはりフッ素樹脂コーティングでした。
しかし、有機フッ素化合物(PFAS)が自然環境下で非常に分解が遅く、環境や人体への悪影響が懸念されることが分かり、米国では既に規制が進んでいます。日本でも大手企業では調理器具や食器などの製品で脱フッ素化の動きが始まりました。
このように脱フッ素にいち早く取り組みたい、というお客様におすすめしているのがシリコーン系の非粘着コーティング『Infinity(インフィニティ)530』です。
『Infinity530』は優れた耐熱性と非粘着性、熱伝導性と耐摩耗性を持ったコーティングです。
特に従来のフッ素樹脂コーティングでは弱点だった摩耗に強いことも評価され、多くの食品工場で置き換えが進んでいます。
【特徴】
✓ 耐熱性 フッ素コーティングよりも優れた耐熱性
✓ 非粘着性 フッ素樹脂コーティングの代替となりうる非粘着性
✓ 熱伝導性 熱伝導性が良く、エネルギーコスト削減可能
✓ 安全性 PFOA/PFAS規制非該当
✓ 耐摩耗性 高硬度で耐摩耗性に優れる
主な導入事例として、べたべたするパン生地の付着抑制や高温で炒める中華鍋の焦げ付き防止などがあります。
また、インフィニティコーティング単独でも十分な効果がありますが、特にマイクロディンプル処理をした上にInfinity530の追加工をすることで、より非付着効果が得られるという実績があります。撥水効果もありますので、洗浄後の水切れ向上や液体調味料のロス削減効果も期待できます。
◇ FDA認証 DLCコーティング ⇒ DLC-F&D®
DLCとはDiamond-Like-Carbonのことで、ダイヤモンドのように硬く、化学的に安定しているため耐腐食性の高い性質があります。
1㎛というごく薄い厚みの非晶炭素被膜ですので外寸の変化はほとんどありません。
このコーティング被膜は炭素原子と水素原子から構成されているので、生体親和性に優れていて安全です。身近な市場採用例としては市販PETボトルの内面に採用されています。特に、㈱サーフテクノロジーのDLCコーティングはFDA(アメリカ食品医薬品局)認証を取得しており、安全が保証された加工です。
食品や医薬品の製造現場ではサビに強いステンレスが多く使われますが、ステンレスは鉄などと比較して摩耗に弱い金属のため、擦れると摩耗粉が発生します。ステンレスにDLCコーティングを行なうことで摩耗粉の発生が抑制され、カッターの刃などでは切れ味が長持ちする効果もあります、
また、MD処理®と組み合わせることで基材とコーティングの密着性が高まりますのでコーティングを長持ちさせることができます。
【効果】
*ステンレス同士が擦れる箇所での摩耗粉を大幅に低減(耐摩耗性向上)
*塩分が多い環境でも腐食を防ぐ(耐食性向上)
*フッ素樹脂コーティングの耐熱(約250℃)よりも高温条件でも付着を抑制(耐熱約400℃)
【特徴】
✓ 耐摩耗性(高硬度)
✓ 耐腐食性
✓ ガスバリア性
✓ 生体親和性
✓ 赤外線透過性
✓ 耐凝着性(低摩擦係数)
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